「火怨」-北の燿星アテルイ-を読む2005年07月09日 17:51


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「火怨」-北の燿星アテルイ
高橋 克彦著
講談社文庫(上・下) 2002.10
初出 新聞連載(河北新報他)
    単行本 講談社 1999.10
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 この本が文庫で出版された2002年はアテルイ没後1200年の年に当たるという。そういえばそんな記事を当時目にした記憶もあるくらいさらっと通り過ぎてしまって下のだが、もっと早くこの本を読んでいれば2002年という年を別の過ごし方もできたのに、とちょっと悔しくなる。
 北の民を率いての朝廷と戦うアテルイ、彼の仲間への思い。読み出した本が止まらない。自らの暮らしと土地と空を守るために立ち上がっただけ、他に何も望まない。その姿がたまらなく哀しく美しい。
 朝廷側の武将として最後にあらわれる征夷大将軍坂上田村麻呂。(この人の名は平安時代の始まりとセットで知っていたのに、その彼と戦った蝦夷の長アテルイの名をきちんと知ったのは最近のことである。劇団新感線の同名の芝居のDVDを観た4月以降ということだ。)彼もまたみごとに描かれている。
 時間を惜しんで夜更け過ぎまでの一気読み。
 星の数で評価するなら5個が満点なら5個きちんとあげたい本を読めた幸せに浸っている。