「騎士(シヴァルリ)の息子」<ファーシーアの一族> を読む ― 2005年10月03日 21:50
中世ヨーロッパ的ファンタジー<ファーシーアの一族>
一族が支配する六公国が物語の舞台となる。
その公国を支配する王族の庶子である少年の回想録という形で記されている本書だが、ファンタジーにありがちな少年の成長物語とは少し違う。
少年が城に引き取られたことによって彼の父である世継ぎの王子は引退し早世してしまった。
6歳で城に来た少年は犬を友として厩舎で育つ。動物に心沿わせる<気>の能力は嫌われている魔法だが少年は知らずに使ってしまっている。<気>は<技>と並ぶこの世界の特殊能力で、少年はこの<技>にも触れることになるのだが・・・・。
王家の暗殺者としての訓練を受け、少年は世界の動きに関わっていくようになる。彼は『触媒』となる存在なのだという。
主人公の少年が影でいることが多いからだろうか、物語の奥に暗闇が潜んでうごめいているような重さがあって、白魔法黒魔法の対決といったわかりやすさもなければ、敵を倒したからと賞賛される喜びの成長もない。ひたすらひっそり裏の部分からの回想。
この薄暗く重い本の雰囲気の慣れるのにさほど時間はかからなかった。後はひたすらこの世界の中で少年と共に生きたのだった。
続編が出版されている。楽しみだ。
「騎士(シヴァルリ)の息子」<ファーシーアの一族>
上・下巻
ロビン・ホブ 著
鍛冶靖子 訳
創元推理文庫
2004.12.24 刊
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