「天保十二年のシェイクスピア」 シアターコクーン2005年10月08日 21:40


10月6日(木) ソワレ  シアターコクーン

井上ひさし 作
蜷川幸雄 演出
宇崎竜童 音楽

天保十二年のシェイクスピア

“宝井琴凌の「天保水滸伝」をはじめとする侠客講談を父とし、シェイクスピアの全作品を母として”産出された作品。シェイクスピアの全37作品が織り込まれていて、初演の時は5時間を超え、終演に近づくにつれて観客が(帰宅を心配して)減っていったという話が伝わっているくらいの大作。

戯曲を読むだけでもぐいぐい引き込まれる。ちりばめられたシェイクスピアにこれでもかとばかりの言葉のリズム、1970代の井上ひさしが凝縮している。

井上ひさし本人が台本に手を入れ、休憩含めて4時間の作品に仕立て直された今回。削られた部分もあり新たに加わった部分もあり。
それをNINAGAWAシェイクスピア俳優が演じる。超豪華な出演者が揃った。

夏木マリの怪演@出だしの歌だけで圧倒される、白石加世子の存在感、舞台の進行役をもつとめる百姓隊長役の木場勝巳・・・・ひとりひとりあげていくときりがない。

開演前の舞台はグローブ座。そのグローブ座が壊されるところから芝居が始まる。始まると同時に両側の電光掲示板にあらわれる文字。

  ♪ もしも
  ♪ シェイクスピアがいなかったら
  ♪ ・・・・・・

時には劇中歌の歌詞であり、劇の場の説明である。

舞台は常にグローブ座の前にしつらえてそこで演じられ、舞台転換が一つ一つ区切られている。

そこに言葉があり、シェイクスピアがあった。戯曲で読んだおかしみ(みんな死んでしまう悲劇的作品のはずなのに読みながらあちこちで笑ってしまう)も舞台の上にあり、一場一場が時にはリア王、マクベス、と区切りながら楽しめたのも新鮮だった。

4時間があっという間の凝縮された世界を満喫した。
2002年の日本劇団協議会10周年記念に上演された同作品は鴻上尚史企画監修、いのうえひでのり演出のものだった。 実際の舞台ではみることはかなわなかったが、DVD化された舞台は幸い見ることができた。
井上芝居は『こまつ座』というものがある以上協議会主催での芝居ではこまつ座と対局にあるものを、と考え、演出いのうえひでのり、ということになったのだと鴻上が語っている。
井上脚本を適当にカットしてのいのうえひでのり(新感線)的舞台は、きらびやかな【完全超悪】。ストーリーでぐいぐいおしていた。


それに対しての今回のNINAGAWAバージョン。

どちらがどうだったかという比べ方はできないが、隊長とエンディングの歌のないいのうえひでのり演出がより悲劇な物語だったのに対し、NINAGAWA演出は<ことば>によった紡がれた舞台だった。

12月にwowowにてテレビ放映される。生の舞台でないとはいえ、またあの舞台を見ることができると思うと待ち遠しい。